世界中で活躍されているアレクサンダーテクニーク 教師のトミー・トンプソンさんのレッスンに参加した時、
《定義の保留》
という言葉をお聞きしました。

人はいつの間にか、目の前にいる人を
『この人はこういう人だ』と定義づけて見ていると。
この人は「先生」。
この人は「生徒」。
この人は「親」。
この人は「子供」。
この人は「真面目」。
この人は「飽きっぽい」。
↑の例はごくごくよくある「肩書き」であったり、「性格を表す言葉」ですが、
このように定義することを保留*し、
ただ「ひとりの人間」として捉え、関わっていくのです。
*保留・・・
そのまま保ちとどめておくこと。とめておくこと。/その場で決定しないで延ばしておくこと。
グループレッスンの場で、
みんなでそれを試してみました。
そうすると、
とても穏やかな空気が流れ、
シーンと静けさはあるけど、
暖かな雰囲気に包まれ、
「ココは何も危険がない。安全だ。」
と、心の底から感じられました。
もちろん、最初から安心・安全な場であることに変わりはないのですが、
自分で定義付けしていたものが解け、
先入観が薄れ、
その場にいやすい状況を自分で調えることができます。
これは、相手への《定義の保留》だけではなく、
自分に対しての《定義の保留》も同じです。
本番を前にした時の自分に対する《定義の保留》
「自分はいつも緊張して失敗する人である」
「自分はまだまだ人前で演奏する資格がない人である」
「自分はアマチュアである」
「自分はプロとして失敗してはならない人である」
本番を前にすると、上のように、なんとも弱気な自分が見え隠れすることがあるかもしれませんが、
このような、自分への定義付けも保留してみませんか?
ただ、
今からこの場で演奏することを選んだ「ひとりの人間」として、
演奏すると決めた曲・音楽を演奏しさえすれば良いのではないでしょうか。
演奏するその場にいて、
自分への定義付けを保留し、
お客さんへの定義付けも保留し、
ただひとりの人間として、その場にいる全てを受け止め、
一期一会のこの場この瞬間、
ここにいる全てとともに音を楽しむ。
そう思いながら、
曲のイメージやストーリーを表出し、
お客さんをその音楽の世界・空間に誘っていく作業をただただ遂行していくのです。
そうすることで生まれる音楽は、
自分がやりたい音楽になり得る可能性に満ち溢れていきます。