呼吸に出るこころの状態 ― 迷い・気負い・決意と演奏の関係
- 泉山民衣
- 7月26日
- 読了時間: 3分
上手くいくかな、できるかな、どうしよう……
そんな言葉が心に浮かぶとき、呼吸はどうなっているでしょうか。
実際に声に出してみると、息が詰まるような、浅くなるような、スムーズに出ていかない感覚があるかもしれません。
そしてそのまま演奏すれば、音にもその迷いは色濃く出ます。
思考と呼吸の関係
思考と呼吸は密接に関係していて、
「できるかな?」「大丈夫かな?」といった不安を含む思考が浮かぶと、呼吸は自然と浅く、速くなりやすくなります。
あるいは、一瞬止まるような、引っかかるような感覚をともなうこともあります。
この呼吸の変化は、演奏中の音の伸びや力強さ、音の方向性にも影響します。
つまり、「どう思っているか」がそのまま「どう音に乗るか」に直結しているのです。
「決める」ことの効果
一方で、「やる」「こうする」と意図を明確にして演奏に向かうと、
呼吸はスッと流れるように出ていく感覚があり、そこに音が自然に乗っていきます。
これは「覚悟」と言ってもいいかもしれません。
「こうしたい」と意図を持ち、
「やる」と決めることで、
曖昧さが減り、身体が迷わず動けるようになる。呼吸にも、音にも、その明確さが表れるのです。
気負いとの違い
ただし、「やってやるぞ!」と気負いが強すぎると、それはまた別の緊張を生み出します。
「決める」と「気負う」は似て非なるもの。
前者は静かな力で方向性を定めるような感覚。
後者は無理に力をかけて押し切ろうとするような感覚。
気負いがあると、逆に呼吸は詰まり、過緊張につながってしまうことがあります。
演奏のための“意図のチューニング”
自分がどんな思考をしているか。
呼吸がどうなっているか。
それを観察し、自覚することは、演奏の質に大きな影響を与えます。
「何が曖昧なのか」「どこでつまずいているのか」を見つけ、
「そもそもどうしたいんだっけ」と明確にしていく作業。
それが、「意図」をチューニングすることにつながり、
自分が望む演奏に近づく道になると、私は思っています。
そして、その意図を“毎瞬”遂行し続ける。
その練習を積み重ねる。
これは、とても地道な作業かもしれませんが、
自分が思い描く演奏への一番の近道ではないかと感じています。

思考、呼吸、音――それらは決して切り離されたものではなく、深くつながっています。
自分がいま、どんな状態でいるか。
何を思っているか。
呼吸はどうか。
小さな気づきが、演奏の質を大きく変えてくれることがあります。
呼吸の観察、思考の在り方、そして演奏。
これらはアレクサンダー・テクニークの視点でも日々探究しているテーマです。
もし、自分の演奏に「何か引っかかる」「思い通りにいかない」と感じている方がいたら、
こうした“内側”の要素にも目を向けてみると、新しいヒントがあるかもしれません。