音を自然に鳴らすためのアンブシュア
- 泉山民衣
- 2019年6月13日
- 読了時間: 4分
お困りのこと、改善したいこと、知りたいこと、できるようになりたいこと・・・
大抵、このような「欲している何か」の存在がありますよね。
独学で10年ほどサックスを吹いていて、初めてレッスンにいらっしゃった方は
「音がすんなり鳴らないから教えて欲しい」ということでした。
鳴らしたいのに思うように鳴らない。。。
鳴らしたいのに鳴らないって、相当なストレスですよね(~_~;)
だから、何が何でも頑張って鳴らそうと思うのですが、
そう思えば思うほど余計にうまく行かなくなって、ストレスも溜まる一方。
ちゃんとやりたいし、やろうとしているのにやれないのですから、嫌になりますね。
こうなってしまうと、思考がクリアでなくなって、力任せになりがちで、
余計な力みが発動しやすくなっていきます。
なので、一旦立ち止まって「音が鳴らない」という事実から、
冷静に考える時間が必要です。
鳴らない状況はなぜ起きているのか。
それは、
楽器の調整であったり、マウスピースやリガチャー、リードなど、自分ではない外側の問題か、自分がしている自分自身の問題なのか。
その可能性を両面から見ていきました。
楽器自体の問題
楽器って部品がたくさん付いていて、サックスの場合はキーの塞がりが悪くなってほんの少しの隙間があるだけでも音の鳴りに影響します。
そのほか、リードが割れていたり欠けていたり、マウスピースと少しずれた状態でリードが取り付けられていたり、マウスピースが欠けているなんてことも…
この部分は、中学・高校の吹奏楽部へレッスンに伺うとたまに見受けられます。。。|ω`)
楽器は全てが音に影響する大事なパーツ。
マウスピース・リガチャー・リードのセッティングを気にしたり、
楽器の普段のお手入れはもちろんのこと、
楽器の調整を定期的にお願いすることは、自分が心地よく演奏するためにも大事なことですよね。
この方の楽器をお借りして吹いてみましたら、
うまく鳴らない原因の1つに楽器の調整の問題は多分にありそうでした。
なので、ご自身のためにもハード面の心配を解消されることをお勧めしつつ、
次は、音を鳴らす体の使い方に関してです。
音を鳴らすために何をどうしようとしているか
吹いてらっしゃる姿で特に口元や首のあたりが力んでいることは一目瞭然でした。
『音を鳴らすために、息をどうしようとしていますか?』
と尋ねてみると、
『ちゃんと音を鳴らしたいので口でマウスピースをしっかりくわえて、勢いよく楽器に吹き込もうとしてます!!』
そうお話ししながら手でそのイメージを表現されていたのは、
ガッと手で何かを掴み、パンチを繰り出すかのような印象。
楽器もそんな風にされたら「鳴ってあげたいけど鳴らせないよ・・・」と言う声が聞こえてきそうです。
そこで、自分と楽器が出会うその瞬間のことを考えてみることにしました。
アンブシュア。自分と楽器が出会う瞬間

リード楽器であるサクソフォンやクラリネットは、リードが振動することで音が発生します。
そしてアンブシュアというのは、
息を音に変えるために、自分(口)と楽器(マウスピース・リード)がひとつに繋がる、お互いが出会うところです。
自分が楽器を迎えに行くのでもなく、
楽器の方へ吸い込まれるように行くのでもなく、
自分が後ろへ楽器から逃げるのでもなく、
楽器をがっちりホールドするのでもなく、
自分のところに楽器が来て、ただ、そこで出会います。
この方は特に、マウスピースが来る前から、口がマウスピースと出会うのに既に臨戦体制になっていて、緊張感が漲っていました。
なので次のように提案。
①マウスピースを見ながら、
マウスピースを口に触れる寸前まで、ただ近づける。
②口は、マウスピースが来てから下顎を動かして少し口を開ける
③マウスピースの背を上の前歯に触れるように楽器を動かす
④微笑むように口角を動かし、下唇を下の前歯にかぶせ、リードに触れるとこまで下顎を閉じる
⑤上唇と口角付近の唇全体をマウスピースに沿わす
(鳥のくちばしのイメージで、唇を前へ伸ばしながら沿わせる)
⑥息を頭の方に向かってただ吐く
(「息は上に」というのは、肺と口の位置関係を見ても、息の出口が上にあるのは明らかですね。上顎にぶつかったら勝手に空気は出口から出て行ってくれます)
やってみていただくと、びっくりなほど劇的に変化!
すんなり、そして音も伸びやかに。
ご本人も『自分でも別人のよう!音がすんなり鳴るようになると練習したくなりますね!』と仰って晴れやかな表情で帰って行かれました^^
楽器の音を鳴らすために、当たり前ですが、楽器と出会う必要がありますね。
その瞬間、楽器と良好な関係を築きたいものです。
そのためには、楽器も大事な相棒ですから、自分が健康のためにケアするのと同じように、楽器の健康状態のチェックも欠かせないものではないでしょうか。
さらに、音を鳴らすために楽器と自分が繋がる瞬間には、目も見ず唐突に出会ったり、ぶつかりに行ったりするのではなく。
笑顔で握手をし合うように慈しみ敬意を払いながらお互いが出会い、
楽器と自分が一体となって「音を生む」という行為に発展していくことで生まれる音楽は
どんなものになるでしょう。
音が生まれる瞬間を堪能しましょう。