(2021/10/15 改定)
多くの方が気になるトピックであるのが【音色】ですね。
これに大きく関わるのは「身体のコーディネーション」です。
身体のコーディネーション??
と疑問に思われる方もいらっしゃるかと思いますが、
パフォーマンスを高めるためには大きなポイントなんです。
身体のコーディネーション(アレクサンダー・テクニーク)
人間は「脊椎動物」にカテゴライズされる通り、身体の軸として「脊椎」があり、その脊椎に沿って脳から各所へ繋がる神経の束である「脊髄」が通っており、頭と脊椎は動きの要です。
脊椎は椎骨というパーツが、鼻と耳の交わるあたりからお尻まで連なっています。
その椎骨と椎骨の間にはゼリー状の衝撃吸収材となる椎間板がありますが、頭と脊椎が縮こまるような姿勢をとると、椎間板はどうなるでしょうか?
→ギュッと押しつぶされ、弾力性は損なわれ、脊椎の動き自体も可動性が低くなってしまいます。
そうすると、脊椎の中でも、肺を囲っている肋骨が 繋がる「胸椎」の動きも悪くなり、呼吸にも影響します。。
これは息が演奏の元手となる管楽器や歌にとっては不利ですね。
また頭と脊椎の動きは、神経や筋肉の繋がりのおかげで腕・脚の動きや機能にも影響します。
腕や脚が単独で動くことは決してなく、人間の身体は頭と脊椎を介して全身が協調して連動するようにデザインされているのです。
頭の動きによる全身の動きへの影響
では身体を通して、頭と脊椎の動きがどのように全身に影響するかを実験してみましょう。
〈実験〉バンザイする(腕の動き)/立つ・座る(脚の動き)
いつも通り、バンザイする、もしくは、立つ・座る、をしてみる
頭の動きを止めて(首を縮めるように)、バンザイする、もしくは、立つ・座る、をしてみる
頭が動けるように縮めていた首を解除し、頭と脊椎が伸びやかなまま(椎間板がクッション性をもちながら)、バンザイする、もしくは、立つ・座る、をしてみる
それぞれ異なる意図で動いてみましたが、
動きのスピード、やりやすさ・やりにくさ、呼吸、目の動き、など、どんな違いがありましたか?
身体の1番てっぺんにある頭が、脊椎へプレッシャーをかけながら動くのか、伸びやかに動くのか。頭の動きを意図することによって、全身の動き、パフォーマンスに大きく影響するというイメージはついたでしょうか。
より良いパフォーマンスを実現するためには、身体が構造的に無理なく、本来の動きのしくみに沿って動けるようにコーディネーションを意識することはとても有効なのです。
「頭が動けること、そして自分全体が動けること」から始まる
身体を縮こませてしまう(筋肉を収縮させ緊張状態を引き起こす)要因は、
身体の構造・動きのしくみの誤解、演奏するためにやる動きの不明瞭さ、奏法の根本的な間違い、思考からの影響、、、とさまざまありますが、『頭からお尻までの頭と脊椎が伸びやかに動けることを意図』しながら楽器を演奏することは、音を自然に豊かに鳴り響きやすくします。
その上で、全身の体の構造・しくみを理解し、奏法のアップデートをすると、より演奏しやすく、表現もしやすくなります。
(興味がありましたら、下記のような記事を書いていますのでご覧ください。)
楽器をどのように支えるか(ストラップ)
座奏時のコーディネーション
呼吸の認識(息の吐き方・吸い方)
アンブシュア
構える時の腕の動き
重心のための足の使い方
など
ソプラノサクソフォンの構え方の場合
ソプラノサクソフォンは、管の形状がクラリネットのようなストレートで、アルトやテナーとは形状が違うため、動きや力加減も異なります。
マウスピースを口元に持ってくるために、腕で楽器を持ち上げるのは動きとしてはピンときやすいですが、腕だけを動かすわけではありません。
(腕の動きについては別記事「ソプラノサクソフォンを構える〈腕〉」で書いています)
盲点になりやすいですが、少なからず頭の角度を変えることも必要です。
頭の動きも構えるときの意識に含めてみませんか?
下を向く動き
頭の角度を変えるのは、頭に繋がる脊椎の動きです。
中でも動きとして大きく見えているのは首部分である「頸椎」の動きですね。
画像をご覧ください。
左側が正面を見ているとき
右側が少し下を向いたとき
頭の角度が、ほんの少しですが違います。
また、これぐらいの小さな動きであれば、頚椎のカーブはさほど変わりません。ほんの少し下を向く動きは頭と脊椎の1番上の骨との関節(=環椎後頭関節)でできます。
こちらの写真で、実際の構えの違いを見ていきましょう。
左は、頭の角度を意識していなかったときの写真です。頭から背中にかけて反っていて、吹奏感はとても窮屈で、腕や背中・首に痛みがありました。
右は、頭が下に傾くことを構えるときに意識したときの写真です。吹奏感も良く、息が吐きやすく、指も動きやすく、腕や背中・首の痛みもなくなりました。
右の写真時にわたし自身が採用した動きの意図は、
『頭が動いて、その頭に自分全体が連動していくことを思いながら、鼻先から動いて口とマウスピースが出会う』でした。
ほんの少しの意図の違いで演奏がこんなに変わるのかと実感しました。
みんな誰でも、まだまだ伸び代だらけです。
身体をうまく使えば、自分の想像以上のパフォーマンスも不可能ではありません。
体としてはより楽に(=難なく。「無理強い」「力任せ」ではなく)思えるほどの動きの方が、音の表現はよりダイナミックに創ることが可能になります。